宮津工務店は、明治時代に創業し、100年を超える工務店です。
そして、三代目の親方(私の父)はバカの付くほど仕事に真面目でカタく、昭和の頑固オヤジそのものの人です。
私は、その親方の仕事に対する姿勢と技術を学びたく弟子入りし、十数年仕事を学び伝統的な技術や手道具の手入れや使い方を身につけ、四代目棟梁として伝統的で地震に強く丈夫な住まいつくりをしています。
そんな私には夢があります。
現在は洋風住宅やデザイン住宅という海外風のオシャレでかっこいい(かわいい)家が人気で、自分も丈夫でオシャレな洋風住宅をご依頼いただき造ってきましたが、ふとした時に自分の好きな町家(和風)建築も今風にアレンジすればカッコいい日本ならではの特別な家が創れるのではないかと思いました。
それこそが古き良き日本の建築意匠美である現代風の町家なのです。
武家屋敷や大きな敷地に建つ農家と違い、
庶民の民家が密集している地域に商店を営むための店舗兼住宅や御茶屋の用途として造られたものが多くあります。
地位の高い人の建物というよりは庶民的な建物です。
しかし、現代その建築様式は古き良き日本の建築意匠美として見直されてきています。
地域によりつくり方やイメージは様々で、有名な町家建築が密集している場所は、京都や岐阜の飛騨高山などが挙げられます。
京都はどちらかというと繊細な造りの町家建築で、飛騨高山は丈夫で剛健な造りの町家建築の建物が多く見られます。
外観は、木組み格子や板張りの外壁、和風瓦、鎧張り、漆喰塗り壁、軒を深く出した造りなどの特徴が見られます。
内部は、国産の杉や桧をつかい内部にも木組みの格子を多く使用しています。
ほとんどの町家には、最たる特徴とも言える土間や囲炉裏があり、昔はそこが団欒の場所としてさまざまなシーンで使われていました。
ほかにも2階建ての建築が禁止されていた時代に作られた箱階段や化粧張りなど、木を生かした建築が特徴的です。
現代版の土間
私が造りたい現代の町家の核となるのが木組み格子と土間の客間です。
昔の生活では、土間に厨房や水周りの家事をこなす場所が集合していました。昔の生活の中で、土間はなくてはならない生活の中心でした。
その土間をうまく活用し、玄関横に客間として設置。気軽に長話をできるような、いい意味で敷居の低い空間と家族のみが使うプライベート空間が両立した住まいにしたいと考えます。
土間には、つくり付けの長椅子とテーブル代わりの囲炉裏を設置。
冬は囲炉裏に火をくべ、お茶を沸かしたり熱燗をつけたりできるように…
古き良き日本の生活を再び取り入れ、ゆったりとした時間を過ごす・・・
そんな住まい素敵じゃないですか?
住宅内部の仕様は現代のものを使います。
床の上に水周り設備を配置し特徴である土間は客間として活用します。最近は核家族化していますし、なかなか家に誰かが宿泊するようなケースも減っています。ですから、もともとの設計から客間の概念をなくし、来客時には土間を使って交流・団欒の時間を持っていただければと考えます。
土間にはしますが、昔のような隙間風が入らないような造りですから安心してください。
昔は、土を塗って壁を仕上げていたので割れてそこから隙間風が入ることがありました。現代の町家建築では、性能の良い断熱材で外部と内部の間をしっかりと遮断します。高性能の下地や断熱材(湿気を給排出する)の上に塗り壁を塗ることで、風合いは昔ながらのものを残しながらも断熱性能の優れた家にしていきます。
現代風町家は、古きを活かし新しさを取り入れる意匠(デザイン)と性能を兼ね備えた住まいです。
木をふんだんに使った内装
現代の町家に使う工法は在来工法と呼ばれる木の柔軟性を生かした工法を使用します。
昔ながらの伝統工法である在来工法は、昔の町家にも用いられてきました。
壁にはたくさん木を使い、昔ながらの建築様式である町家ですが、中は基本的にフローリング仕様にして現代建築と昔ながらの建築様式を組み合わせたハイブリッドな造りを実現します。木組み格子を多く取り入れることで、防犯の面では半透明・透けて気配はうかがえるが丸見えではない絶妙な空間を実現します。
当然のことですが、システムキッチンやIHなど、電気機器は現代のものを使って造り上げます。風合いを大切にしたい方には、木を使ったオーダーメイドキッチンをご提案することもできます。
また、トイレや洗面は、落ち着いた色の木製仕上げにしていきます。
浴室も板張りや和の仕上げにすることで、町家の良さを生かした家造りをします。
家具も町家にマッチした木製家具を設置します。
要望があれば2階建てが禁止されていた時期に、箱を積んで階段の代わりにしていた箱階段を設置したり、自在鍵という囲炉裏の上に吊る金具などもご提案させていただきます。
随所に昔の面影を大切にしながらも現代製品の良いところを活かした住まいに仕上げていきます。
昔ながらの意匠の高性能住宅
昔は耐震のために筋交い(すじかい)を入れて強度を増していたところ、現在は構造用合板という建材と筋交いを組み合わせて使い、さらに補強金具で補強して強度を増します。昔ながらの建築意匠美は損なうことなく、現代の耐震基準(建築基準法)をしっかりと満たす建物にしていきます。それにより、住宅の耐震等級の最上級である3等級を満たすこともできます。
そして、断熱・調湿・吸音の3つの効果を発揮する自然素材から作られたセルロースファイバーの断熱材を壁に施工します。新しい断熱材であるこの素材は地球環境にも配慮していて、冬は暖かく夏は涼しい家となります。
昔の町家では、窓は非常にガラスが薄く、木製の枠組みのため隙間風が通ってしまったり、木が反りたてつけがわるくなり開閉がしにくくなったり、断熱効果もほとんど無かったと言えるでしょう。しかし、私の考える現代の町家では、「LOW-E複層ガラス」という素材を使い、樹脂製の枠を使用します。複層ガラスを使用することで防音効果を高め、断熱効果・気密効果・結露防止効果も考えます。
気密性が高くなることで、冷暖房などの光熱費を軽減することも可能になります。また、樹脂製の枠組みは町家の木の風合いにもマッチしたものを合わせることができるため、デザイン性を損なうことなく、現代の高性能住宅として、お施主様の快適な日常生活を実現します。
町家の建築意匠は、日本にしかないデザイン住宅です。
京都や飛騨高山などの町並みは、どこか心落ち着きますよね。そんな家に住んでいただきたい。
そして、現代では薄れてしまった人と人とが行き交いコミュニケーションがとれる家が私の造りたい現代の町家建築なのです。
靴を履いて使う土間客間と、家族のみが使う場所とを使い分け、両立させることで友人知人ご近所の人たちがストレスなく長く立ち寄れ、玄関先での立ち話ではなく土間客間でコミュニケーションを多く取っていただきたい。土間客間のメリットは子どもの遊び場・大人の談笑の場として様々な用途に使用することができます。冬には囲炉裏で鍋を囲む姿を想像してください。なんか観光旅行に来たみたいで素敵な家族のワンシーンが思い浮かぶことでしょう。
土間客間を使ってのコミュニケーション以外でも、自然素材の国産材を使用し内部を仕上げていくため、建材を多く使用したためになってしまうアレルギー(シックハウス症候群)の心配も少なくなります。生活の調湿効果や消臭効果、防音効果を自然素材や自然素材由来の材料を使うことによって得られ、天然木の匂いや色合いを感じ森林用のような効果も得られます。
日常と非日常が同居する家が現代の町家建築なのです。